桐蔭高校

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校長あいさつ

第35回桐蔭展の開催にあたって(H29年12月7日)

第35回 桐蔭展の開催にあたって     29.12.7


 年の瀬恒例の桐蔭展を、皆様方のご理解・ご支援により、今年も開催することが出来ました。本展は昭和58年度の第1回開催から数えて35回目となります。

 生きていく中で、感動したことや感激したことを自分の中だけに留めず、様々な手段で表現し、周りの人達と共感していく。このことは、人が心豊かに生きていく上で、とても大切なことだと思います。文化の創造は、常により意義あるものを自分ないし自分たちの手でつくってみたいと拘ることであり、欲しいものは何でもお金と交換できると考えてきた文明社会の行き詰まりに一筋の光明となるとも言われます。

 桐蔭展には、生徒が美術・書道・家庭等の授業で制作したものと、美術部・書道部・華道部・写真部等の部活動での創作品を中心に、全スペース余すところなく展示しております。その展示作品の多くは未熟なものではありましょうが、限られた時間内で若い感性とエネルギーが注ぎ込まれたものであります。

 吉田兼好(兼好法師)の随筆『徒然草』の第百五十段「能をつかんとする人」の冒頭に、次のようにあります。

 能をつかんとする人、「よくせざらんほどは、なまじひに人に知られじ。うちうちよく習ひ得てさし出でたらんこそ、いと心にくからめ」と常に言ふめれど、かく言ふ人、一芸も習ひ得ることなし。
 (芸能を身につけようとする人は、「うまく出来ないうちは、うかつに人に知られないようにしよう。内々でよく練習して上手くなってから人前に出たら、たいそう奥ゆかしいだろう」と常に言うようだが、このように言う人は、一芸も身につくことは無い。)

 だから、十分な出来映えでなくても、積極的に発表の機会を得ることは意義があります。
 生徒のもつ可能性や創造力の豊かさを感じ取っていただき、彼らが更なる高みを目指して精進するよう、ご声援いただきたく存じます。
 また本展は、卒業生や保護者の方々、教職員にもご参加いただき、「チーム桐蔭」の文化的交流の場となっていることを申し添えます。

ポスト研究開発 桐蔭キャリア教育の深化(H29年9月1日)


ポスト研究開発 桐蔭キャリア教育の深化        29.8.24

 

  本校は「進学を主とする普通科系高等学校におけるキャリア教育」をテーマとして、平成25年度から研究開発学校の指定を受け、全校あげて取り組んできた。その主な成果として、進学校におけるキャリア教育のあり方や可能性を示すことができたとともに、バックワードデザインによる教科指導など、キャリア教育を軸としたカリキュラムマネジメントの考え方が芽吹き、様々な教育活動を構造化・体系化する準備が整ったことがあげられる。また、学校設定教科「キャリア桐の葉」の学びを通じて、生徒は肯定的な自己変容を感じるとともに、本校教育活動全般に対する保護者の理解や賛同も進んでいる。
  学びへの適応能力が高い本校生徒の大人度を高め、しっかりした将来展望を抱かせて次のステップへ送り出すためには、キャリア教育を主柱とする桐蔭の教育全体をより高いレベルへ引き上げることが求められる。このことは、研究開発学校としての指定が終了するこれからが正念場で、桐蔭キャリア教育によって生徒の「学ぶ力」が獲得され、高い志や目標を持つ生徒を育てるに至った結果として、進学実績の向上へと波及し、進学校におけるキャリア教育の普遍的な価値につながると考えるからである。

  一方で、研究開発が一段落した今、これまで推進役を担ってきた教員と他の教員の間に、キャリア教育への意識や実践面で乖離が少なからずみられる。このことは、キャリア教育の中核をなす「キャリア桐の葉」の指導だけではなく、キャリア教育の重要な場とされる、全ての教科の授業、特別活動、部活動、生徒指導、進路指導においてもあてはまる。この状況は、キャリア教育をより充実・発展させる機会を見過ごしたり、これまでに培った経験や手法等を十分にいかしきれないことにつながる。
 桐蔭キャリア教育をさらに深め、教育的成果をあげていくために、いくつかのの課題と改善点を以下に記す。そのキーワードは「見える評価」、「取組の進行管理」、「教員の本気度」である。

 生徒の大人度を高める指標として「付けたい力30」をピックアップし、桐蔭キャリアプログラムの実効性を測る指標と定めている。この力は、中核となる「キャリア桐の葉」だけではなく、学校での様々な指導・支援の機会や、生徒と関わる様々な場面で育まれるものとされている。重要なことは、生徒自らが評価し、何が課題でどう改善すべきかを気づかせることである。そのために毎年度末にルーブリック評価等を行わせ、それをもとに教員と面談することも有効な手法である。生徒が次年度で改善・成長しようと思う事については、いつまでにどの程度という目標を立てさせ、生徒自らが進行管理することも極めて重要である。
 一方、教員も、この「付けたい力30」をどのような場面で指導するのか、結果としての生徒の変容や成長をどう評価するかを、日々、意識し、実践することが重要である。このことが、桐蔭の様々な教育活動をキャリア教育を柱として、有機的に繋げ、まとめることになる。
 教員が「付けたい力30」の一つ一つについて評価することは、現実的ではないかもしれない。この30の力を集約・分類して、例えば「独り立ちできる能力」、「人や社会とつながれる能力」、「課題を認識し、解決できる能力」の3つのカテゴリで評価する方法もあるだろう。
 個々の指導において、桐蔭生は正解を求める傾向があることから、葛藤させる経験も大事で、葛藤を通じて、自己をコントロールする術や、より高い目標へ挑戦する強固な意思や意欲が育ち、高いレベルの価値観や規範意識につながることが期待できる。また、適切な負荷を与えたり、環境の変化を経験させることも、順応性や適応能力を高める上で不可欠であるとともに、良い習慣を心と体に覚えさせることは、自信を持たせる上で重要である。
 全ての教員が、自らの持ち場における指導や関わりで、生徒が変容し、大人度を高めていくか、前向きな展望と弛まない取組や工夫改善をすることが重要である。

 各教科が取り組んでいる桐蔭ST(スタンダードテスト)は、より良いテスト結果となるために指導の内容や方法を考え、授業を設計するという、バックワードデザイン本来の目的には十分、達していない。STを作成した時点では、教科内で目標設定等について活発な議論が行われ、その趣旨や目的についての認識が深まったと思う。しかし、数年が経過し、年度末に1回実施している現状においては、その活用や効果は過年度生との成績比較資料にとどまっている。授業をよりアグレッシブに変えていくためには、短いタームでのバックワードデザインが必要で、教科書の単元や章ごとにゴールを設定し、効果的な評価システムを開発、実施すべきである。定期考査、宿題考査、模擬試験(外部検定も含めて)等にも、STの一役を担わすことは可能であり、結果分析と指導方法の改良を速やかにつなげることこそが重要である。

 入学直後の新入生アセンブリーで用いられる「桐蔭の学び」は、各教科の学びが将来にどう生かされるかを理解させれば、日々の学習意欲を向上させることができるという視点で作られた秀作で、桐蔭生の学びのバイブルともいえる。
 教員にとって、「桐蔭の学び」を作ることが、何を指導するかを議論し、確認することになり、極めて重要なプロセスであった。このことについては、常に教科内で議論は続けなければならないものである。生徒の学習意欲の向上という点では、毎授業や単元の最初に、授業者が自らのスト-リーを作って、生徒に何を学ぶのかを意識させ、終わりに学びの振り返り、生徒自らが学んだことを再構築するという展開も重要である。

 キャリアプランに関しては、入学後の早い段階で「桐蔭3年間のキャリアプランニング」に取り組ませることが重要と考える。桐蔭での他の生徒との関わりや、3年という時間経過(成長プロセス)で、如何に自分の高校生活(人生の重要な一区間)を充実・発展させるか、集団の中で自らが個性や存在感をどう発揮しようとするのかを意識させながら、3年間を見通させる。作成したプランは学年末など一定期間後にふり返らせ、修正させていく。「桐蔭3年間のキャリアプランニング」には、部活動と勉強との両立、文理選択、志望校の設定など、現実的な関門があり、挫折や失敗からのリカバリーも含まれ、その延長線上に、15年後、20年後の自分をイメージさせることが重要と思う。
 人生や生活に幸福や満足を感じる上で、キャリアプランを“やりたいこと”、“やれること”、“やるべきこと”の3つの点から、分析的にとらえることが重要である。経験の少ないなかでは、“やりたいこと”が突出したり、“やれること”が非現実的であったり、自信が持てないことから、目標設定から目をそらす場合もある。特に、“やるべきこと”については、担うという義務的な側面だけではなく、人々や社会にどう貢献できるか、いわゆる利他の心を意識させることが重要で、このことについては桐蔭リーダー塾等、社会人講師から学ぶ意義は大きい。

 本校のキャリア教育の更なる深化には、教員一人一人の教科指導力とファシリテーション能力の向上が必要不可欠である。今回の研究開発において、「学力」がキャリア形成上大きなウエイトを占めると考え、桐蔭FD(ファカルティ・ディベロプメント)と名付けた質の高い授業の提供を組織的に取り組んできた。このFDをさらに充実させ、「生徒が知的感動を覚える授業」、「生徒が自ら学ぶ習慣・力の確立へとつながる授業」、「基礎的学力を確実に習得させる授業」の3つ目標を全教員が同時平行的に追求していくべきである。特に、自ら学ぶ習慣・力に関して、隅々まで全て教え込むことではなく、教科書等を読み解く力を育てることを重視すべきである。さらに、生徒に授業や単元の最初に何を学ぶのかを意識させ、終わりに学びの振り返り、生徒自らが学んだことを再構築する展開も大事である。授業中、生徒が“頭”をよりアクティブにするには、教員の発問の質、生徒との問答が重要であることは、言うまでもない。
  教員のファシリテーション能力を高めることは、単に授業の在り方や手法を変えるだけではなく、生徒の能力を信じ、主体性を引き出すことにつながり、教員と生徒の関係性をドラスティックに変える可能性があり、そのことはキャリア教育の究極の目的とも合致する。
 
 最も重大なことは、桐蔭教員集団の意識変革である。本校教員は帰属意識が高く、指示されたことには誠実かつ真摯に対応する。一旦、形が出来上がってしまうと、こなすことに終始し、自らの蛸壺に引きこもってしまうような面もある。常にアグレッシブな刺激を与え続けないと、形骸化し、もとの状態に戻ってしまう恐れ、これが、本校教員の組織文化で、最も大きな課題である。
  作り上げたキャリア教育カリキュラムを完成したものと捉えず、今後も、修正・開発を継続的に行うことが重要である。なぜなら、その営みを通じて、主体的に考え、研鑽し、学校全体をリードする教員を絶えず生み出していくことになり、桐蔭教育の改革発展につながるからである。生徒は、その教員の姿から多くを学ぶ。

焦らず、弛まず、怠らず(H29年7月13日)


『自らの人生を切り拓く力』は桐蔭で鍛えられる(H29年6月30日)

『自らの人生を切り拓く力』は桐蔭で鍛えられる


 今年は、昭和23年の新制高校への切り替わりから70年目、来春の卒業生は桐蔭高校70期生という節目にあたります。また、旧制和歌山中学校創設からは139年目となります。
 最近、ある週刊誌に“旧制一中の系譜を受け継ぐ公立名門校の実力”という特集が組まれました。各都道府県ナンバーワンの旧制中学校を引き継ぐ公立高校の教育内容や進路状況、卒業生を特集したもので、桐蔭高校も取り上げられています。記事によれば、ほぼ全ての旧制一中に共通する教育理念が「幅広く教養を修め、身体を鍛え、文武両道を目指す」ということで、旧制一中はひ弱なエリートの養成ではなく、国や地域社会を担う気概と実力を兼ね備えた人材育成という使命を帯びていたと紹介されています。
 幼少期の子供の育ちには、「背中の教育」と言われるように、親の振る舞いや姿勢が大きな影響を与えますが、青年期の人格形成には学校の校風・伝統等が大きな意味を持ちます。どのような仲間や先輩、先生と相まみえるか、このことは、その後の人生に決定的な影響を与えることも少なくありません。
 桐蔭は、強い意志を持った、宝石の原石のような生徒が多く集う学校です。高いレベルの「文武両道」に挑戦する者、感性や創造力を高めようとする者等、多様な個性がぶつかり合い、磨きあうことで、原石は輝きを放つようになります。
 一方、近年、良い意味での活気溢れる“ゴツゴツ”した生徒が少なくなっていると感じます。これは、現代の少子化社会と無関係でないと思います。そこで、桐蔭は4年前から『大人度を上げる教育』として、キャリア教育の充実に取り組み、桐蔭らしさの維持・発展に努めています。
 学校は夢や希望を語る場であり、絶望や諦めを体得する場ではありません。このことは、夢想する場やオーバーケアな環境であれと言っているのではありません。学校は、日々、新たな夢や希望と遭遇できますが、取り巻く状況や取り組むべきことも変わっていきます。例えば、勉強する内容は日々難しくなり、友達との関係性も普遍ではありません。
 子供たちは、しっかり勉強したい、部活動を頑張りたい、友達と仲良くしたいという前向きな気持ちとともに、様々なプレッシャーと日々、向き合っています。この負荷が、人間的に成長出来る大きなきっかけとなります。一生懸命に何かに取り組み、解決あるいは改善できたとき、“結果的に”成長し、生き抜く力の獲得につながっているというのが実態です。適切な負荷や適度に変化する環境、これが子供たちの真の成長にとって、とても大切なことなのです。
 環境や境遇の変化に合わせて、性質や行動が変わっていくことを順応や適応と言います。生物進化の歴史から、過酷な環境変化にうまく順応や適応できた種が栄え、生き延びてきたことがわかります。
 これからの社会、人工知能の発達・実用化など、激動・激変の時代になると予想されます。世の中が大きく変わる時には、思いもよらないピンチと思いがけないチャンスが待ち構えています。どのようなリスクにも対応できる備えや能力を、あらかじめ身に付けることは現実的に不可能です。むしろ、ピンチにおいても何としても生き延びるという強固な意志と行動力、チャンスを逃さないという執着心や柔軟性が、人生を大きく左右することになります。
 つまり、激動・激変の時代を生き抜く重要な資質として、高い順応性や適応能力が求められます。それらは、学校生活で、学ぶことに誠実であるとともに、常に前に進み、全力を尽くす姿勢を貫くことで鍛えられます。それが自らの人生を切り拓く力の本質であると考え、今後も桐蔭は、そのことを大事にして、教育活動に取り組んでまいります。      

                                                                                    (PTA新聞『とういん』 寄稿)          





 

校長あいさつ

                                                            

             

校長あいさつ



    和歌山県立桐蔭中学校・桐蔭高等学校

校 長  清 水 博 行 

       
 桐蔭のホームページにお越しくださいまして、ありがとうございます。

  桐蔭は、明治12年、和歌山城南隣の岡山に設立された旧制和歌山中学校に始まり、明治22年からは城内西の丸広場に、大正4年からは現在の吹上の地と、お城に臨む市内中心地で、その伝統「和中・桐蔭の流れ」を受け継いできました。
 旧制和歌山中学校から138年、戦後の学制改革で桐蔭高等学校となってから69年が経過し、併設された桐蔭中学校も11年目を迎えます。この間、高邁の志を有した有為な人材を輩出し続けたことが桐蔭の「伝統」であり、4万人に達する卒業生は、政治・経済、医療、科学技術、教育、芸術・文化、スポーツ等様々な分野で、本県のみならず、日本さらには世界を舞台に活躍しています。
 また、平成25年度から文部科学大臣の指定を受けてキャリア教育の実践的な研究開発に取り組むなど、常に新たな挑戦、「改革」を続ける学校でもあります。さらに、生徒及び関係者が抱く桐蔭への帰属意識は高く、それが「チーム桐蔭」という力の源泉になっています。
 
 どのような校風や校訓のある学校で学ぶか、学生時代にどのような仲間や先輩、先生と相まみえるか、このことは、その後の人生に決定的な影響を与えます。基礎的な能力や人間としての裾野のひろがりは、大学入学前、つまり高校までの環境で決まるといわれます。高いレベルでの「文武両道」を目指す若者が集う桐蔭は、人としての素養を高めることにおいて優れた学舎であることは、多くの卒業生の活躍から見ても確信できるものです。

 19世紀英国の哲学者、ジョン・スチュアート・ミルの『功利主義論』に次の一節があることは良く知られています。
 It is better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied.

 桐蔭の使命は、中途半端な妥協や自己満足ではなく、課題意識を失わずに身を焦がすような覚悟をもって挑戦し続ける生徒を育てることにあり、それが「自ら人生を切り拓く人を育てる」という真意であります。桐蔭がその期待に応えることができるかどうか、和歌山県の将来を左右するとともに、わが国の未来にとって重要であるという責務を胸に、全力で取り組んでまいります。

 もとより微力ではありますが、生徒・保護者はもとより、地域の方々に夢と希望を与えられる学舎となるよう、教職員とともに精一杯努力する所存でおります。どうか本校のこれからの教育活動にご関心を持っていただくとともに、より一層のご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

                                                                          平成29年4月

 




 


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