桐蔭高校

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校長室の窓から

令和2年度3学期終業式式辞(R3年3月24日)


                 三学期終業式式辞              R3.3.24



 本日で令和二年度が終了します。今年度はまさに、コロナに始まり、コロナで終わったという一年間でした。


 一年の締め括りとして、皆さんに人間の「思い」について、話をします。皆さんは、勉強ができる、学校の成績がよいということが大事であると思われているかもしれません。もちろん、それも大事なことですが、心にどのようなことを「思う」かということは、それより遙かに大切です。この「思い」こそが、人間のすべての行動の基本、源になっているからです。私たちは、生活をする中で、それぞれ「思い」を持っており、それが「言葉」となり、それに基づいて「行動」します。そしてその「行動」は「習慣」となり、その人の「人格」をつくり、最終的には「運命」へとつながります。このように、まず心に「思う」ことが、最終的には人間の「運命」を形成することにもなるのです。


 「思い」についてもう一つ伝えたいことがあります。桐蔭の前身である和歌山中学校のOBで、外務大臣、特命全権駐米大使、海軍大将等を務められた、野村吉三郎氏は第二次世界大戦真っ只中の昭和17年に母校を訪れ、講演を行いました。その講演の中で野村氏は、驚くべきことに、当時英語が敵性語として排斥されていたにもかかわらず、英語の必要性、物事の視野を広く持つことの大切さを説かれています。そして、その際に寄贈された『ウエブスター英英大辞典』は、現在校長室に桐の箱に収められ大切に保管されています。恐らく国内に一冊しかないとも言われており、本校の宝物の一つとなっています。その大辞典には学ぶことの大切さを訴えた野村氏の「思い」が込められており、和中時代から連綿と続く桐蔭生である皆さんへの大いなるメッセージとなっているのです。


 この一年間、各学期の始業式・終業式の式辞がすべて校内放送で行われました。校長としての「思い」が皆さんに十分伝わったかどうかわかりません。私の校長としての最後の「思い」は皆さん一人一人が、それぞれの「思い」を強く持って、自ら人生を切り拓いてほしいということです。頑張れ、桐蔭生。





令和2年度卒業式式辞(R3年3月1日)



令和2年度卒業式式辞                R3.3.1


          『初心忘るべからず、学び続けよう』               

                                             学校長  木皮 享


 校庭の木々の芽もほころび始め、確かな春の息吹を感じる今日の佳き日、ただ今271名に卒業証書を授与いたしました。卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。そして保護者の皆様方、お喜びと感慨は、ひとしおのことと拝察いたします。心からお祝い申しあげます。


 本日、PTA会長保井伸介様、同窓会長森下正紀様のご来賓と保護者の皆様方のご臨席を得て、本校普通科第73回・数理科学科第28回卒業式を挙行できますことは、私ども教職員一同、大きな喜びであります。平成3年度に設置された数理科学科は平成31年度の新たな普通科設置にともなう募集停止のため、数理科学科76名の皆さんは、数理科学科としては最後の卒業生となります。

 

   卒業生の皆さん、手に取った卒業証書の重さは、皆さん一人一人の高校生活の充実度に比例して感じられることでしょう。3年前皆さんは期待に胸を膨らませ、本校に入学してきました。この3年間を振り返ると、まず世界に目を向ければ、政治、宗教、文化的価値観等の違いによる対立や、広がり続ける繁栄と貧困の格差、核保有の脅威、足並みのそろわない地球温暖化への対応、そして100年に1度のパンデミックといわれる新型コロナウイルス感染拡大等、明るいニュースというより暗いニュースの方が多かったことは否めません。また国内に目を向けると、気候変動にともなう集中豪雨による河川の氾濫が毎年のように発生し、今年度から始まった大学入学共通テストに象徴される入試改革があり、英語の民間試験活用や記述式問題導入の見送りが試験実施1年前に発表されるなど混迷を極めました。特に皆さんが3年生に進級してからは、新型コロナウイルス感染拡大による非常事態宣言のため、全国一斉の休校措置がとられ、緊急事態宣言の解除後も各都道府県レベルでの休校措置が続きました。本校においてはその間、生徒の健康状態の把握や、動画配信を中心とした学習課題の提供等を行いながら学校再開に向けての準備を進め、様々な制限つきの中、ようやく6月1日から新しい生活様式を踏まえた学校生活が始まりました。3年生にとって最後の目標となるインターハイが中止となり、代わりに県レベルでの独自大会が開催されました。また、夏休みが大幅に短縮され、2学期が始まり、文化祭、体育大会等の学校行事も内容等を大幅に変更して行わざるを得ませんでした。3学期に入り、感染拡大の第3波が押し寄せ再び全国11都府県で非常事態宣言が出される中、大学入学共通テストが実施されました。皆さんはこのような時期に高校生として多感な青春時代を過ごすことを余儀なくされましたが、私は皆さんがこの桐蔭での高校生活の随所で見せてくれた、逞しさや、しなやかさを思い起こすとき、困難なことを経験したからこそ、本日本校を巣立っていく一人一人には、必ず将来夢や志を実現するときが来ると信じています。

 

   嬉しいニュースもあります。先月発表されましたが、本校の同窓会館とグラウンドにあるスタンドが国の有形文化財に登録されることが正式に決定されました。同窓会館は旧図書館として昭和4年の建築で当時のモダンな建築様式が現存し活用されていることと、スタンドは今から99年前の大正11年に、後の昭和天皇が皇太子として、スタンドの完成直後に旧制和歌山中学校の野球の試合を台覧するために行啓されたこと等から、ともに文化遺産として貴重な価値があると認められたことによります。一昨年の和中・桐蔭創立百四十周年に続き、歴史と伝統を誇る桐蔭ならではのことでもあります。


 さて、皆さんが生まれ育った21世紀の社会は、情報化やグローバル化といった社会変化が人間の予想を超えた速さで伸展しています。特に人工知能、ビッグデータ、Iot、ロボティクス等の先端技術が急激に高度化し、あらゆる産業や社会に取り入れられ、社会の在り方が劇的に変わるとされるSociety5.0の時代を迎えています。しかし一方では、このような高度情報化、科学技術の発達、交通環境の発展等は、旧約聖書の創世記に登場するバベルの塔に似ていると思います。現代社会は便利で効率的な生活を手に入れる代価として、情報の洪水による混乱や人間関係の希薄化等が急速に進み、物質的な豊かさを手に入れることが出来た反面、心の豊かさを失う等、社会に歪みをもたらしています。そして、さらに追い打ちをかけるかのような新型コロナウイルスの出現は、人々の意識を転換させようという天意をもった人類に与えられた課題であると言えます。そのため私たちはこのコロナ禍を通してどのように変化し、どのように成長するのかを考えなければなりません。ただ恐れるだけでなく、これからの成長の機会として捉えることが必要です。

 

   卒業にあたり皆さんに、世阿弥の『初心忘るべからず』という言葉を贈ります。世阿弥のいう「初心」とは、物事を始めた時の初々しい気持ちという意味ではなく、己の技量の未熟さであり、失敗のことを指します。つまり世阿弥は、自分の未熟さの自覚を忘れてそこに安住してしまえば、もはや芸は一歩も上達しなくなるという人間の心にある慢心を戒めているのです。その上で単に過去に囚われるのではなく、過去に学び、人生は常にこれからだと、挑戦し続けていく事が必要です。現在が単なる過去の延長ではなく、常に今がスタートラインだと思うことが大切なのです。皆さんにはこれからの人生の中で、どのような場面に直面しても、世阿弥の『初心忘るべからず』という言葉を思い出してくれることを願っています。


 最後になりましたが、皆さんは桐蔭で『文武両道』の校訓の下、『改革と伝統』『自ら人生を切り拓く』ことを指針として学んできました。桐蔭は旧制和歌山中学校の流れを汲む歴史と伝統のある県下有数の名門校ですが、皆さんには、卒業してから母校を誇りに思うことがあっても名門を誇るのではなく、自らの実力を糧にして生きてほしいと思います。そして人生百年と言われ、同時に先の見えにくい時代だからこそ、学び続けることを忘れないでください。学ぶということは昨日まで見えなかったものが見えるようになり、心が豊かになることです。学ぶことにより、感動を失わず、感動できる自分も失わず、自然や人間の豊かさがわかる人になってください。同窓会館前にある『努力!天は自ら助くる者を助く』の碑文で有名な和中OBで外務大臣、特命全権駐米大使、海軍大将等を務められた野村吉三郎氏は、第二次世界大戦中母校を訪れ講演を行い、当時英語が敵性語として排斥されていたにもかかわらず、英語の必要性、物事の視野を広く持つことの大切さを説かれています。その際に寄贈された『ウエブスター英英大辞典』は現在校長室に桐の箱に収められ大切に保管されています。恐らく国内に一冊しかないとも言われており、本校の宝物となっています。本日は卒業にあたり、是非皆さんに実物を紹介したいと思い、ここに持ってきました。学ぶことの大切さを訴えた野村氏の思いがこの大辞典に込められており、まさに和中時代から連綿と続く桐蔭生である皆さんへの大いなるメッセージであると思います。


 改めて卒業生の皆さん、おめでとう。皆さんには本校の校庭にあるクスノキの大木のようにスケールの大きな人間として、これからの社会において活躍されることを祈念し、私の式辞とします。





3学期始業式式辞(R3年1月6日)


          三学期始業式式辞     

                       令和3年1月6日

                        学校長 木 皮  享          



 新年おめでとうございます。今日から三学期が始まります。


 昨年は新型コロナウイルス一色の一年でした。今年も、ワクチンが一般に普及するまで感染拡大が続くのではと予想されます。同時に今年は「withコロナ」から「ポストコロナ」へと私たちの生活や心の持ち方の変化が求められる一年になります。そのため私たちは、このコロナ禍を通してどのように変化し、どのように成長するかを考えていかなければなりません。ただ恐れるだけでなく、自分の成長のチャンスにするという発想の転換が必要です。不安が存在するも当然です。しかし、不安を排除して異物扱いにしていけません。不安を常態のものとして、ありのままに見つめる。そうした心の姿勢こそがコロナ後の世界で求められるのだと思います。人類の歴史や文明の発達が示すように、一般的に困難や問題というのはすべて、人間や社会を苦しめるために出てくるのではなくて、人間を成長させるために、社会をよりよくするために出てくるものだと思います。言い換えれば困難や問題を乗り越えていくことしか、私たちは次の新しい時代を生き抜く能力を獲得できないということです。

 

 さて、新年及び三学期始業式にあたり、改めて志について話します。志とは、自分が社会に出て一人前になったら、その自分をもって少しでも社会に貢献し、役に立とうとすることです。しかし、志を立てれば必ず成功するということではありません。失敗することもあります。そのため志というのは一度失敗しても作戦を練り直して、また新たな志を持つことが出来るのです。皆さんには常に高い志を持ち、困難にあっても、自分の進む道をしっかり見据えて、自ら人生を切り拓いてほしいと思います。


 最後に、高校三先生の皆さん、大学入学共通テストがいよいよ今月の16、17日に始まります。大学入試が人生の全てではありません。また、その後の人生を保障するわけでもありません。しかし、志を実現するための第一歩であり、通過点であることは間違いありません。受験に挑むにあたり、皆さんに詩人の坂村真民(さかむらしんみん)さんの「仏のこころ」という詩を紹介します。「追い詰められて/初めて人間は/本物になる/だから本物になるためには/絶対絶命の瀬戸際に/立たされなければならぬ」短い詩ですが、人間が成長するためのエッセンスが含まれていると思います。不安、緊張、焦り等、様々なことがあると思いますが、自分を信じて乗り越えてください。



二学期終業式式辞(R2年12月25日)


          二学期終業式式辞     

                       令和2年12月25日

                        学校長 木 皮  享          



   本日で二学期が終了します。そしてあと数日で2020年も終わります。毎年師走に発表される一年を表す漢字は「密」で、今年はまさに新型コロナウイルスに翻弄される一年でした。この見えないウイルスの脅威に対応するため、社会は新しい生活様式を生み出し、すでに私たちの生活に浸透しています。学校においても同じで、多くことに制限が設けられるようになりました。しかし何でも制限をすればよいのかというとそうではありません。ウイルスに打ち勝ち、または共に生きる知恵を持つことが出来るかどうかが試されています。このような状況に対応するためには、例えば学校行事であれば、ただ安易に中止するのではなく、想像力を働かせ、どうすれば開催できるか、どのような代替案があるのかと考え、判断し、実行することが必要です。桐蔭では生徒・教職員共に知恵を出し合い取り組む姿が見られました。二学期の始業式で、「変化できる者が生き残ることができる」というダーウインの進化論を例えて述べましたが、目の前の試練に柔軟に対応しながら乗り越え、新たな知恵を身につけることがいかに大切であるかということを改めて感じました。


 さて、二学期を終えるにあたり、二つの言葉を皆さんに紹介したいと思います。 

 一つ目は『自反尽己(じはんじんこ)』という言葉です。文字通り、自らに返り己を尽くすということです。わかりやすく言えば、自反とは指を相手に向けるのではなく自分に向けること。すべてを自分の責任と捉え、自分の全力を尽くすことです。人間は上手くいかなかったことや失敗や不運、苦難に出逢った時は、他人のせい、環境のせいと嘆いたり、愚痴を言ったりしがちです。しかし、不平不満や愚痴では何も変わりません。その出来事をどう捉え、向き合い、どのように自分を変えていくかが大切です。


 二つ目は『根を養う』ということです。人間が人生という時間軸の中で自らの花を咲かせていくには、植物と同じように根がなければなりません。シドニーオリンピック女子マラソン金メダリストの高橋尚子さんは、高校時代の陸上競技部顧問の先生に「何も咲かない寒い日は下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」という言葉を教わったそうです。地中の根は人目にはつきません。人間も植物と同じで、見えないところでコツコツと努力することが根を養うこととなり、大きく成長することにつながります。


 コロナ禍の中で、日常生活において様々な制限があり、これまでの当たり前の生活がいかに大切であるかということを考えさせられる一年でした。しかし、どんな時でも、見方を変えればチャンスであるとも言えます。遠くのことを思って不安になるのではなく、一日一日を充実させ、成長する喜びを感じながら努力すれば、必ず状況は変わります。『自反尽己(じはんじんこ)』、『根を養う』という言葉をから、一年を振り返り三学期を新たな気持ちで迎えてください。



本校のキャリア教育の取り組みが雑誌「先端教育」で紹介されました。(R2年12月8日)

本校のキャリア教育の取り組みが、月刊「先端教育」2021年1月号(学校法人 先端教育機構 出版部)にて紹介されました。「キャリア教育の新局面 変わる仕事観と円滑な社会接続」という特集の中で、「進学校のキャリア教育」として、本校が平成25年~28年の文部科学省研究指定以来深化させてきたキャリア教育の実践内容が2ページにわたりまとめられています。
  ※画像上のクリックでオンライン版のURLにリンクします。閲覧には定期購読の登録が必要となります。)




二学期始業式式辞(R2年8月17日)


          二学期始業式式辞     

                       令和2年8月17日

                        学校長 木 皮  享          


  短い夏休みが終わりました。今日から二学期が始まります。


 二学期も感染症や熱中症に気をつけながら学校生活を送ることになります。始まりにあたり、皆さんと一緒に考えたいことがあります。9月に行われる文化祭、体育大会等の学校行事をどうするかについてまだ結論は出ていません。感染症拡大防止のことを考えると、二つの行事を中止することは簡単です。しかし、新型コロナウイルス感染防止のためにリスクを下げることは大切だけれど、リスクがゼロなるということはありません。そこを突き詰めてしまうと、学校がどんどん窮屈になり、狭い考え方になってしまいます。大事なことは、生徒も教職員も主体的に考えることです。文化祭、体育大会をどのような形で行えるのか、あるいはそれらに代ってできることがあるのかを一緒に知恵を出しましょう。進化論を唱えたダーウインは、世界中を回って様々な環境を研究した結論として、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残ることができる者は変化できる者である」という有名な言葉を残しています。新型コロナウイルスが私たちに与えている教訓は、目の前の試練に柔軟に対応しながらそれを乗り越えていくこと。その度に新たな知恵を身につけていくことになるのではないかと思います。

 

 さて、二学期が始まる節目に皆さんに二つのことを伝えたいと思います。それは「まずやる、すぐやる」と「身の回りの掃除をする」です。


 「まずやる、すぐやる」とは、人間は生きている限り、誰もが迷います。そして失敗のない人生などまずありません。思うに任せない人生の中で夢を叶えるにはコツコツ努力するしかありません。その地道な努力の効果を少しでも高めていくために、君たちに身につけてほしい習慣が「まずやる」「すぐやる」です。これをやらなければ次へ進めないという強い意識を持って「まずやる」ということが大事です。「するぐやる」とは、席に着いたら脇目も振らず、とにかくやるべき勉強や仕事をすることです。当たり前のことですが、やるべきことを「すぐやる」習慣をつけてほしいと思います。

 

 「身の回りの掃除をする」とは、和歌山県出身で、経営の神様と呼ばれたパナソニック創業者であり、晩年に政治・経済のリーダーを育成するために松下政経塾を創設した松下幸之助氏が塾生によく次のような言葉を話したそうです。「君らが立派な指導者になる第一の勉強は掃除や。朝起きたらしっかり掃除しいや」「君ら、日本の掃除をする前に、身の回りの掃除をせえ。身の回りの掃除ができん人間にどうして日本の掃除ができるんや」日本の掃除という大きな理想を実現する前に、まず身の回りの掃除をするとは、足下を見て、自分がこのままでいいのかと我が身を省みることが大事だという意味も含まれていると思います。皆さんはどう思いますか。


 二学期は、引き続きいろんな制約がありますが、知恵を出しながら一人一人がより主体性を持って行動してほしいと思います。皆さんが充実した学校生活が送れることを期待しています。


一学期終業式式辞(R2年8月7日)


          一学期終業式式辞     

                       令和2年8月7日

                        学校長 木 皮  享          


  ようやく一学期終業式を迎えることができました。

一学期始業式は校内放送で行い、入学式は時間を短縮して体育館で行うことができましたが、残念ながら皆さんが一堂に集まって式を行うことは現在の状況ではまだ困難であると思います。


 さて、3月2日から始まった臨時休校措置が幾度か延長が繰り返され、5月一杯まで続きました。その間、登校日の設定をして分散登校をしたり、6月1日より県下一斉に学校再開が行われても分散登校が続き、途中、中間考査などがあり、本校では実質6月22日からクラブ活動も含めた通常の学校生活が始まりました。学校が再開されてからも、感染症拡大防止に向けて、「新しい生活様式」への順応が求められています。


 私は、休校期間中に学校が再開できたら、この長期の休校中に、君たちがどのように過ごしていたかをアンケートで聞いてみたいと思っていました。7月下旬に君たちが、これまでの生活・学習・クラブに関する質問に加え、休校期間中について9つの質問をグーグル・クラスルーム等を用いて回答してくれた結果を大まかに紹介します。回答者は高校生です。1つめは、生活リズムは7割以上の生徒が乱れている。2つめは、睡眠時間は5割以上の生徒が長くなっている。3つめは、家族との会話は、4割の生徒が普段より増えている。4つめは、スマートフォンを使用する機会は、約8割の生徒が増えている。5つめは、学習状況については、2割以上の生徒が普段以上に学習できている一方、4割以上の生徒は学習の質・量が低下していると感じており、二極化が見られる。6つめは、学校から与えられた課題、参考書、問題集や配信された動画にはよく取り組んでいる。7つめと8つめは、学習面、進路面については、多くの生徒が不安を抱えている。9つめは、自由な時間、自分のペースでの学習、趣味、休養などの時間がとれた生徒が半数以上ある。以上が数字を基にしたアンケート結果です。自分はどうであったか、今一度振り返ってください。


 今、世界中で、人々は不自由な生活を強いられています。そして多くの人は、私たちを含め情報化社会の中で、様々な情報に触れ、根拠のない情報に振り回され、判断に迷ったり、誤った行動をする場合もあります。以前から繰り返し述べてきましたが、新型コロナウイルスについて「正しく恐れる」「自己防衛をする」ことが大事です。加えて、どのような状況下でも「主体性を持った行動がとれる」ことが何よりも大切です。単にマニュアルや指示に従うだけでなく、自ら考えて、課題を解決するという日頃から桐蔭が大切にしている主体性をどのように身につけるかが日常生活の中でも問われています。


 今年は百年に一度起こるかどうかという世界規模でのパンデミックが発生しました。君たちのように中学生、高校生という多感な時期にどういう体験をし、困難なことにどのように対処してきたかが後の人生に大きく影響すると思います。その意味においても、一人一人が一学期を振り返り、これまで経験したことを二学期以降に生かしてほしいと思います。9日間という短い夏休みになりましたが、引き続き感染症や熱中症には十分気をつけて有意義に過ごしてください。


合格体験記巻頭言(R2年6月26日)


(合格体験記巻頭言)

  

            『危機を機会と捉え、人生を切り拓こう』


                                                         学校長  木皮 享

 

 国による入試制度の方針転換による混乱と、世界規模での新型コロナウイルス感染拡大による休校措置の影響から、3年生の皆さんにとっては受験シーズンを控え先行きの見えない状況が続いています。また9月入学導入の是非も話題に上る中、不透明な状況に拍車がかかっています。先行きの不透明な時代だからこそ、桐蔭の教育指針である、主体的に人生を切り拓く力が必要となっています。


 本年度から始まる大学入学共通テストは、入試改革の二つの柱である英語民間試験と国語と数学の記述問題の導入が見送られましたが、各教科では「思考力・判断力・表現力」を測るため、日常的な場面を題材に資料から情報を読み取って答える問題や、英語リスニングの配点比率が増えることには変わりがありません。


 一方私たちの周りや世界に目を向けると、現在の感染症拡大により、日常生活において新しい生活様式が求められていることを始め、多くの分野において世界規模での変化への対応や、また近年深刻化している地球温暖化や経済格差など、人類が解決することが困難な問題にも直面しています。


 3年生の皆さんにはこのような状況を踏まえ、危機を機会と捉えてほしいと思います。人類や社会が直面する様々な課題を意識しながら、今の時期を単に受験勉強のための知識を身につけるだけでなく、今後生きていく上で、様々な課題に挑戦していくための知恵を身につける機会だと捉える。高校時代にそのような経験をすることは、受験勉強だけでなく自己の成長とともに、その後の人生に大きく役立つはずです。

 

   先輩たちが残してくれた『合格体験記』は誰にでも自分に合った成功の道があるということを示しています。それらの貴重な体験を参考にし、受験をゴールにしてその先を考えないのではなく、現在直面している課題が自分たちの将来とどのように関係するのかについても想像力を働かせてください。受験という人生の通過点を自分自身のやり方で歩み、人生を切り拓くことを期待しています。



生徒の皆さんへ(5)(R2年6月22日)


6月22日 生徒への呼びかけ(校内放送)


  皆さん、おはようございます。

 中間考査が終わり、今日から全員登校での通常の授業となります。新型コロナウイルス感染防止のためにこれまで分散登校をしてきましたが、授業が通常の時間帯となり、クラブ活動も再開します。クラブ活動は、各競技のガイドラインや、各部の方針にのっとり活動を行うことになります。通常と言っても、国内外で新しい生活様式が求められているように、学校生活においても出来る限り“3密”を避けることが必要です。

 また、感染症予防に一番効果的なのは、手洗いの徹底だと言われています。そのため、今週は2限目と3限目の休憩時間と4時間目の終了後にそれぞれ5分間休憩時間を延長して、放送局による“手洗いタイム”を呼びかけることになっています。

 特に、今は梅雨の真っ最中で、これから益々蒸し暑くなるので熱中症にも十分気をつけてください。こまめに水分補給をしましょう。

 そして、発熱があったり体調が悪い場合は、これまで通り無理せずに自宅で休むことも大切です。

 日本は世界的にみて比較的被害が抑えれており、国内においても、和歌山県は近畿の中でも最も感染者数が少ない県ですが、今後第2波が来ると予想されています。 恐れ過ぎず、油断し過ぎず、自らを守るという意味で“自衛”という考え方を常に心に留めておいてください。皆さんが学校生活を安全に送れるように先生方も、一緒になって取り組んでいきます。



校 長 木 皮  享





生徒の皆さんへ(4)(R2年5月18日)


 5月18日(登校日)生徒への呼びかけ(校内放送)


  皆さん、おはようございます。

 5月15日、本県に発令されていた緊急事態措置の解除に伴い、県教育委員会から「県立学校については引き続き、5月31日まで休業とするが、今後、各学校において登校日を設定し、段階的に学校再開に向けた準備を行う」という内容が発表されました。

 本校は、本日時間差による一斉登校としています。明日からは今月末までは、各クラス3分の1ずつの登校を行い、各学年が計画している面接や授業ガイダンスを行います。


 資料で配付されている『感染対策10箇条』を守り、体調等が悪い場合は無理せずに自宅で休んでください。今月一杯は学校再開の慣らしの段階と捉え、悩みや不安なことがある場合は、遠慮せずに担任・副担任の先生に相談してください。


校 長 木 皮  享





生徒の皆さんへ(3)(R2年5月7日)


生徒の皆さんへ(3)

 

             『今こそ読書と新聞を読もう!』


   新型コロナウイルス感染拡大の勢いが収まらず、非常事態宣言の延長が決まりました。それに先立ち、和歌山県では臨時休業措置が5月31日まで延長となりました。世界に目を向けると、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の4月7日現在の集計によれば、学校閉鎖を全土で行っている国・地域は180以上となり、全世界の児童生徒の91.3%に当たる約15億7600万人が授業を受けられていないと言われています。今、世界中の若者が、皆さんと同じように自分の未来がどうなるのか不安を抱いています。


 休校が長引いているのは、生徒の安全を最優先に考えているからです。しかし残念ながら正規の授業の再開を見通すのは容易ではありません。桐蔭生の皆さんは現在、先生方が作成した動画で学んだり、プリント等の課題に取り組んだりしていますが、この状態は本来の学校の姿ではありません。学校とは、教師と生徒がいて、お互いに学びあい、その中で心を通わせ、絆を結び、社会性や規律を育み、人間として成長するところです。


 以前にも伝えましたが、感染症から身を守り、一瞬一瞬を大切にしてほしいということは変わりません。同時にこのような状況だからこそ、これまで受験勉強やクラブ活動などで後回しにしてきたことにも取り組むことを期待しています。この休校の機会に、出された課題の学習に取り組むだけでなく、出来るだけ活字に触れてほしいと思います。そのためには読書と新聞を読むことを薦めます。


 読書は感性を養うことになります。読書の素晴らしさは、自分自身の生き方に示唆を与えてくれるような本と出会えたときに、作者の言葉が直接心に響き、作者と心を通わせているような感覚になれることです。読書は人生を豊かにします。


 新聞を読むことは知識を深めるだけでなく、世の中の動きを知ることになります。私たちは今、歴史の転換点に立っているのかもしれません。感染症の拡大はいつかは落ち着くことになります。そのときに自分たちの周りや世の中はどのように変わっていくか、その様を新聞を読むことにより知ることができます。ネットやSNSでも情報を得ることができますが、活字を通して自分の頭で創造力を働かせることが大切です。


 危機を機会と捉え、今回のように想定外のことが起こったときこそ自分を成長させる機会だと捉えてください。 "It’s always darkest before the dawn."


                          令和2年5月7日  学校長  木 皮  享



  最近読んだ本を紹介します。                 


  『ペスト』  カミュ著 新潮文庫

  『美意識の値段』  山口 桂著 集英社新書

  『知の旅は終わらない』  立花 隆著 文藝春秋

  『コンビニ人間』  村田沙耶香著   文春文庫

  『未来を読む~AI格差は世界を滅ぼすか~』大野和基インタビュー編 PHP新書

  『マチスとルオー友情の手紙』ジャクリーヌ・マンク編 みすず書房


生徒の皆さんへ(2)(R2年4月17日)


桐蔭生の皆さんへ(2)


                 『感染から自分を守り、一瞬一瞬を大切にしよう』


 国内はもちろんのこと世界的に新型コロナウイルスの感染拡大が猛威を振るう中、臨時休校措置が5月6日まで延長となりました。そして7都府県に実施されていた緊急事態宣言が全国に拡大されました。この事態は人類の歴史がこれまで幾度となく繰り返してきたウイルスとの闘いの一環だと言われています。そのような中で、皆さんは3月からの休校と春休みに加え、始業式や入学式を除き、2ヶ月以上学校生活を送ることができなくなりました。授業や進路、健康に関することなど不安があるのは当然です。しかし、今一番大切なことは自分自身がウイルスに感染しないことです。そのことが自分だけでなく、家族をはじめ周りの人も感染から守ることになります。


 これまでの休校期間中、皆さんは学校からの課題等に取り組んだり、読書をしたり、あるいは家の手伝いやゲーム等、いろいろな形でそれぞれの時間を過ごしていると思います。始業式でも述べましたが、このような時こそ、「一瞬一瞬」を大切にし、自分が何をなすべきかをしっかりと考え行動してください。長時間、家でいると体が鈍ったり、ストレスが溜まったりします。工夫して心と体のバランスを保ってください。また、皆さんの健康状態を把握するためにも、学校からのメールによる健康状況調査には正確に答えてください。


 学校が再開した時に何よりも元気な皆さんに会えることを願っています。「明けない夜はない」という言葉を信じて、先生方も学校再開に向けて万全の準備をしているところです。今こそ桐蔭生としての自覚の下、外出を控え、「3密」を避けることはもちろんのこと、人と人との接触を出来るだけ避け、休校期間中の計画をしっかりと立てて、一瞬一瞬、一日一日を有意義に過ごすことを期待しています。

          

                    令和2年4月17日  学校長  木皮 享



生徒の皆さんへ(臨時休校にあたって)(R2年3月4日)


生徒の皆さんへ 


 前例のない事態で、臨時休校となりました。本来ならば、この時期は春休みまで、それぞれ進級する上で必要とされる学力等を身につけたり、次年度に向けての準備をする期間でした。国中が緊急事態であるからこそ、本校の教育指針である『自ら人生を切り拓く』という精神の下、桐蔭生として日頃から大切にしている主体性を発揮する機会と捉えてください。感染症対策を万全にし、基本的生活習慣を確立し、家庭学習を通じて、今やるべき事に取り組むことを期待しています。春休み以降は平常に戻り、成長した皆さんに再会できることを楽しみにしています。


                       令和2年3月4日  学校長 木皮 享


令和2年度入学式校長式辞

令和二年度 入学式式辞


       『主人公意識を持って行動しよう。学ぶ意義を大切にしよう』

                                                                         令和2年4月8日


 春爛漫の季節となりました。先ほど入学を許可した新入生の皆さんに、ここで改めて入学のお祝いを申し上げます。そして、保護者の皆様に心からお祝い申し上げます。


 国内はもとより世界的に新型コロナウイルス感染拡大が猛威を振るう中、本県においては都市部とは異なり感染拡大が一定限度落ち着いてるとして、新学期から学校再開に向けた取組を進めてまいりましたが、近日中の県内感染者数の増加と、近隣府県が緊急事態宣言の対象地域になったことを踏まえ、急遽、県立学校は4月12日(日)まで臨時休校措置となりました。しかしながら、入学式はお子様が学校生活をスタートする上で必要であるとの判断の下、令和二年度の入学式を短縮した形ではありますが、挙行することになったことを保護者の皆様方にはまずもってご理解いただきたいと思います。


  さて、本校は、明治12年、和歌山城南隣の岡山に設立された旧制和歌山中学校に始まり、明治22年から城内西の丸広場、大正4年からこの吹上の地と、常にお城を間近に見上げる市内中心地において、伝統ある「和中・桐蔭」の流れを受け継いできました。今年は、旧制和歌山中学校創設から142年目、昭和23年の桐蔭高校への切替わりから73年目、そして桐蔭中学校の開設から14年目となります。


 現在に至るまで知の巨人として知られる南方熊楠、戦前の中学校野球で初の全国連覇を成し遂げた野球部、世界で初めてビタミンAの抽出に成功した高橋克己博士、海軍大将、駐米特命全権大使、外務大臣等を歴任した野村吉三郎氏、ベルリンオリンピックで『友情のメダル』として知られる西田修平氏、直木賞作家の津本陽氏など、本校は、政治・経済・医療・科学技術・芸術・文化、スポーツに至る社会のあらゆる分野で、幾多の優秀な人材を生み出してきた「文武両道」を校訓すとる歴史と伝統のある学校であります。


 式辞にあたり、入学された皆さんに二つの事を述べたいと思います。
 一つめは、桐蔭での学校生活において主人公意識を持って、行動してほしいということです。既に知っている人は多いと思いますが、特に高校一年の皆さんは、これまでの入学生とは違う特徴があります。それは18歳成人の問題です。民法が改正され、2022年4月1日から、成人年齢が20歳から18歳へ引き下げられることになりました。皆さんの年代は、満18歳を迎える日に成人となる先駆けになります。今後どのようなことが起こるかと言うと、例をあげれば、学校生活では転学・退学の進路の決定をする際や、銀行でクレジットカードを作ったり、商品を購入するためにローンを契約する際などは、一応、法的には保護者の同意が要らなくなります。権利が与えられる分、それだけ責任が重くなるというこです。そのためこれまで以上に、責任と自覚を持った行動が皆さんに求められることになります。では、どのように行動すればいいのか。人間は生きていく上で「意識」が大切です。日常生活において、どういう意識を持って生きているか、それがその後の人生を決定すると言っても過言ではありません。その意識とは、主人公意識と被害者意識の二つに分かれます。 何事にも「させられている」「してくれない」「他人のせいにする」というのが被害者意識で、これに対し、主人公意識とは、自分の人生においては全て自分が主人公であり、責任者であるという意識です。この意識に立つ人はあらゆる事態に、自ずと主体的、積極的に立ち向かっていく事ができます。皆さんがこれからの桐蔭での学校生活において、この主人公意識を持って行動することを期待しています。


  二つめは桐蔭での学ぶ意義を大切にしてほしいということです。グローバル化が進展する国際社会にあってリーダーとなるべき資質や、あるいはAI・人工知能を最大限に活用する第四次産業革命が到来していると言われる中で、現代社会が求める総合的な人間力を身につけることが必要となっています。本校は、校訓である「文武両道」の下、「桐蔭は自ら人生を切り拓く人を育てます」という教育指針を掲げており、学業のみならず、部活動・行事にも力を入れています。部活動の全員参加はいうまでもなく、キャリア教育を通じて「学ぶ意義を大切にしよう」「学校行事にしっかり取り組もう」を合い言葉に教育活動を展開しています。桐蔭に入学したからには、これまで以上に学びたいという意欲に燃え、知る・わかる喜びと、感動する経験を味わってほしいと思います。そのためにも、皆さんには「今起こっていること」に関心を持つことを期待しています。「学び」は人生のパスポートです。学校生活以外で、世の中や世界で起こっている様々な事象に関心を持ち、その本質を問い、なぜなのかを自分で考える習慣を身につけることを願っています。「なぜ学ぶのか」「君は、どう考えるか」桐蔭では皆さんに問いかけ続けます。


 本校は、これまでの百四十一年の歴史の中で、様々な分野において、指導的な立場となり、活躍できる人材を輩出してきました。今後もそれは変わりません。皆さんにもこのことを期待しています。将来の予測が困難だと言われるこの時代に、皆さんが今後、社会のリーダーとして国内外で大いに活躍してくれる日を、私たち教職員一同のみならず、広く県民は望んでいます。


  保護者の皆様、本日はお子様の本校へのご入学、誠におめでとうございます。冒頭でも述べましたように、新型コロナウイルス感染拡大が続く中、本県においては4月12日(日)まで臨時休校措置となりました。来週からの学校再開にあたり、うがい、手洗いを始め、授業における教室の換気を始めとする、所謂“3つの密”を防ぐ感染防止対策の徹底を行い、学校行事を見直し、クラブ活動等に一定の制限を加える等、生徒にとっては従来とは異なる高校生活のスタートとなりますが、安心・安全を第一に考え、教育活動を展開して参りたいと考えています。同時にご家庭におかれましても、お子様の発熱や体調不良の際には無理をせず登校を控えていただき、ご家庭で休養する等、感染拡大防止ための取り組みをお願いします。このような場合は、欠席扱いではなく、出席停止扱いとなりますので、進路上では決してお子様の不利にはなりません。『明けない夜はない』という言葉が示すように、教職員一同気を引き締め、この困難を乗り越える覚悟でございますので、保護者の皆様には、どうかご理解いただき、本校の教育活動へのご支援とご協力を賜りたいと存じます。歴史と伝統を誇るこの学び舎で、お子様方が楽しく満ち足りた学校生活が送れることを心から願っています。


 以上をもちまして、私の式辞といたします。                               

平成31年度入学式校長式辞

 平成三十一年度 入学式 式辞


                       和歌山県立桐蔭中学校・桐蔭高等学校

                         校 長 木 皮  享

 


   春爛漫の季節となりました。先ほど入学を許可した新入生の皆さんに、ここで改めて入学のお祝いを申し上げます。そして、保護者の皆様に心からお祝い申し上げます。
 本日多数のご来賓と保護者各位のご臨席を得て、平成三十一年度の入学式を挙行できますことは、私ども教職員一同、大きな喜びでございます。


  今年は皇太子殿下が5月1日に新天皇に御即位され、元号が「令和」と改められる記念すべき年でもあります。また本年度より本校は平成3年開設の数理科学科を募集停止し、これまでの教育システムを発展的に融合させた「新たな普通科」を設置したスタートの年でもあり、新入生の皆さんがその最初の入学生となります。


   本校は、明治12年、和歌山城南隣の岡山に設立された旧制和歌山中学校に始まり、明治22年から城内西の丸広場、大正4年からこの吹上の地と、お城を間近に見上げる市内中心地において、伝統ある「和中・桐蔭」の流れを受け継いできました。今年は、旧制和歌山中学校創設から141年目、昭和23年の桐蔭高校への切替わりから72年目、そして桐蔭中学校の開設から13年目となります。


 現在に至るまで知の巨人として知られる南方熊楠、戦前の中学校野球で初の全国連覇した野球部、ベルリンオリンピックで「友情のメダル」として知られる棒高跳びの西田修平氏、直木賞作家の津本陽氏など政治・経済・医療・科学技術・芸術・文化、スポーツにいたる社会のあらゆる分野で活躍する、幾多の優秀な人材を生み出してきた「文武両道」を校訓とする歴史と伝統のある学校であります。


 式辞にあたり、本校にちなんだ言葉を紹介します。

 本校の生徒手帳に「青雲高く」という以前に歌われていた応援歌があります。その詩を紹介します。「青雲高く空に映え 見よ吹上の学園に 俊鋭の士気溢れたり 若人よ奮ひ立て 桐蔭 桐蔭 桐蔭 ああ桐蔭」故事に「青雲の志」という言葉があります。「立身出世して高位・高官の地位に至ろうとする功名心」と広辞苑にはあります。また「青雲高く」の歌にもあるように青雲とは高い空とそこに浮かぶ雲であり、どこまで行っても到達できない、それでもその雲を目指してあくまでも努力し、歩み続ける。青雲の志とはそういう意味でもあります。言い換えれば、理想に生きるということです。自分自身で掲げた志や目標が節目節目に必ず支えになってくれます。自分の目指すものを見据えることができると、自分と他人を比べて気にしたり、悩むようなことはなくなります。自信を持って自分自身の志を育ててください。これが皆さんに願う第1点です。


  次に「努力 天は自ら助くる者を助く」という言葉が同窓会館前にある石碑に刻まれています。これは皆さんの大先輩で、海軍大将・外務大臣・駐米特命全権大使を歴任した野村吉三郎氏の言葉であります。野村吉三郎氏は、本校の前身和歌山中学校を何度か訪れ、後輩達に努力することや勉強する大切さを語られ、励まされたそうです。先ほど引退したメジャーリーグのイチロー選手も引退の会見で、自らの生き様について次のように述べています。「自分の限界をちょっと越えていく、その積み重ねでしか自分を超えていけない」数々の大記録を打ち立てたイチロー選手の言葉も、私たちに努力することの大切さを教えています。努力することを惜しまない。これが皆さんに願う第2点です。


   そして「桐蔭は、自ら人生を切り拓く人を育てます」という言葉が校内の掲示板などで見られると思います。これは本校の教育目標であり、それを実現するために本校ではカリキュラムの工夫やキャリア教育の充実に取り組んでいます。グローバル化が進展する国際社会にあってリーダーとなるべき資質、あるいはモバイル機器やAI・人工知能を最大限に活用する第四次産業革命が到来している中で、現代社会が求める総合的な人間力を桐蔭でのすべての学びの中で育てることを柱としています。また、学びは校内だけではありません。本校が位置する吹上地区は市の中心地であり文教地区でもあります。周囲には県立近代美術館・博物館、和歌山城、県立図書館等、様々な学びの環境が整っています。入学生の皆さんにはこのような恵まれた教育システムや環境を積極的に活用し、学び続ける姿勢や本物に感動する心を大切にしてほしいと思います。学びたいという意欲に燃え、知る・わかる喜びに打ち震える経験を味わってほしい。一生感動する心を持ち続けてほしい。これが皆さんに願う第3点目です。


   本校は、これまで様々な分野で、指導的な立場となり活躍できる人材を輩出してきました。今後もそれは変わりません。皆さんにもそれを期待しています。そのためにも、普段の学習をとおして、人類が造り上げてきた膨大な知的・文化的遺産を自分の中で貪欲に取り組み、咀嚼し、同時に世界で起こっている様々な事象に関心を持ち、その本質を問い、なぜなのかを自分で考える習慣を身につけてください。「君は、どう考えるか」桐蔭は皆さんに問いかけ続けます。将来の予測が困難だと言われるこの時代に、皆さんが社会のリーダーとして全国、世界で大いに活躍してくれる日を、私たち教職員一同のみならず、広く県民は望んでいます。
 

  保護者の皆様、本日はお子様の本校へのご入学誠におめでとうございます。中学校からの六年間、高校からの三年間は、それぞれ人生の方向を決める大事な時期であり、悩みや苦しみの多い時期でもあります。私たち教職員一同は、お子様が自らの生きる道を、自ら切り拓いていけるよう、全力を尽くして参りますが、子供達の健全な成長を望み、豊かな個性を育てていくためには、学校と家庭がそれぞれの役割を果たしながらも、相互に補完し合い、連携を密にしていくことが重要であると考えています。どうか本校の方針をご理解いただき、ご支援とご協力を賜りたいと存じます。歴史と伝統を誇るこの学び舎で、楽しく満ち足りた学生生活が送れることを心から期待します。


  最後になりましたが、同窓会を始め多くの方々の力強いご支援を受けて、来る10月12日には、和中・桐蔭創立140周年記念行事を行います。新入生の皆さんを迎え、ますます躍進する桐蔭中学校・桐蔭高等学校を祝福する場としたいと考えています。
  以上をもちまして、式辞といたします。
 

 平成31年4月9日
                                       

「自ら学び挑戦する人間を育てるために」(校長あいさつ)


校長あいさつ 
                


     ~自ら学び挑戦する人間を育てるために~
                

                和歌山県立桐蔭中学校・桐蔭高等学校
                                      校  長    木 皮  享


 桐蔭のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
 桐蔭は、明治5年の「学制」公布により、同12年和歌山城南隣の岡山に設立された旧制和歌山中学校から今年で141年目、また昭和23年新学制により、桐蔭高等学校が誕生してから72年目を迎え、これまでに約4万人の有為の人材を世に輩出してきました。卒業生の多くは、政治・経済・医療・科学技術・文化・芸術・スポーツ等、様々な分野で手腕を発揮され、郷土和歌山のみならず、日本さらには世界を舞台に活躍されています。


 桐蔭ではこれまで校訓である「文武両道」のもと、切磋琢磨して勉強やクラブ活動に励み、学ぶことの意義や真理を探究し、自らの資質能力を高めてまいりました。この伝統は、時代を超えて、先輩から後輩へとしっかりと受け継がれています。また本校の正門には「改革と伝統」のモニュメントが建立されており、「真に人を育てる力を有する学校」であり続けるために日々の教育活動に励んでいます。


  そのような中、桐蔭ではすべての学びの中で「自ら人生を切り拓く人を育てる」という教育目標を掲げており、まず第一に「何のために勉強をするのか」という根源的な問い=「philosophy(哲学)」を大切にしています。大人はもちろん、大抵の子供たちは「勉強は自分のためにする」と答えるのがほとんどです。しかし桐蔭では「本当にそれだけでよいのだろうか」「君はどう考えるのか」と問いかけ続けています。その上で「自らの人生を切り拓く」ためには生徒たちに、「risk taker(リスクをとれる人)」になることを期待しています。日本の教育は子供たちが失敗しないよう安全な進路を選ばせる傾向にあると言われがちですが、それではchallengingな生き方ができません。リスクをとるということは責任をとることでもあり、リスクをとれない限り自分の道を切り拓いていくことはできません。「philosophy」を身にまとい「risk taker」たる気持ちが育っていれば、生徒たちは自ら学び、挑戦し、世界に通用する大人・リーダーへと成長していくものと考えています。


  AIの進化などで、科学の本来の目的や人間的な幸せとは何かといった問いに対して答えが出しにくいといわれる時代に、先人たちが築いてこられた歴史と伝統、そこに脈々と流れる思いを引き継ぎ未来へと繋げるため、これからも桐蔭は常に「改革と伝統」の精神を掲げ、志を高くもち、人材の育成に取り組んでまいります。


 微力でありますが、生徒・保護者はもとより、県民を始めとする多くの方々に、信頼され、夢と希望を与えられる学校となるように、教職員一同精一杯努力する所存です。今後とも本校の教育活動に関心をもっていただくともに、本校への温かいご支援、ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

平成31年4月


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